おじさんぼっちでローマの休日9 :フィレンツェ天ぷらそば味:後編
芸術は爆発だ!
芸術は爆発だ!!!
生で見たダビデ像の素晴らしさに感激した僕は爆発していた。
岡本太郎先生のおっしゃることがよく分かるような気がした。どういうことを表したくてこの発言に及んだのかは知らないけれども、とにかく芸術は爆発だ!ということは理解できる。爆発だ!
美や、技術に満たされて、自我が破壊されて、新しい自分にになる感じ。爆発だ!!!
アカデミア美術館を出て、とりあえず爆発爆発ブツブツと言いながら歩いていたら、変なパーマの女が話しかけてきた。
「Are you Japanese?」
「ああはい」
「!!!マヤク、エイズハンタイのショメイをオネガイシマス!」と日本語で署名をするように求めてきた。
「え?」
「ドラッグエイズハンタイのショメイ!」紙を拡げて署名をするところを指さす。
…テメーな、俺は芸術が爆発してるんだよ!ダビデ像で岡本太郎先生が爆発なんだよ!
お前はなんだその頭は!!パーマが爆発かこのパッパッパッパーマネントっておまえは皿田きのこかこのやろう!!!
大体麻薬にエイズ反対って署名してそれがどうにかなるのか?
「4丁目に火葬場建設反対!」とかそういうの具体的な目標があるんだったらわかるけどさ。力にはなれないなと思ってその場から去った。
東京と名古屋と大阪が違うように、ローマとフィレンツェも結構違った。ローマはやはり大都市ということもあり、カオスというかゴッチャゴッチャしているところがあると思う。フィレンツェはやはりメディチ家のおかげか、少しお高く止まっている感じが魅力的な街だと思った。「花の都フィレンツェ」なんていうしね。
だいたい「フィレンツェ」という響きがお高い感じで、カッコイイ。僕の中で「都市の名前かっこいいランキング」でも上位に入る。ちなみに1位はもちろん!ロシアの「サンクトペテルブルグ」
次の「ウフィツィ美術館」の予約は16時半から。しばらく時間があったのでまたウロウロした。
今朝、「あの霧の山の上には行くのはやめよう」と橋の上で考えていた。その川の先にはこの観光名所「ポンテ・ヴェッキオ」があったわけだ。橋の上にいくつかの店がある。実際には、両端に店がずっとあって、その流れでいつのまにかこの橋になっている感じなので、途中で「あ、ここら橋だ」と気づいた。
ちなみに昔はこの橋の上は肉屋が沢山あったらしいが、あまりに臭いため(そのままドボンと捨ててたのかな?)全て移動させられて今は貴金属店しかない。
橋の上からの風景。
左側の建物はウフィツィ美術館。
ウフィツィ美術館近くのシニョリーア広場。貴重なものと思しき像がデデーンと置いてある。ちなみに2枚目の奥の方にダヴィデ像が見えるが、あれはもちろんフェイク。ただし元々はこの位置にあったらしい。
街に彫刻が置かれているというより、街が彫刻のような気もしてきた。
フィレンツェ、朝はウンティウンティまたウンティと思っていたけど、本当はこんなに美しい街だったんだ。みなさん間違ってもなんとかカンポ駅には行かないように!
そしてウフィツィ美術館に向かう。
フィレンツェに行ったら、ここに行かないとまずいらしい。フィレンツェといえばウフィツィ美術館、ウウフィツィ美術館といえばフィレンツェ。絶対的存在なのだ‥‥
物凄い行列で最後尾には「ここから60分〜90分待ち」みたいな表示があった。ディズニーランド並み。オフシーズンとは思えない人の数だ。
もちろんメディチ家の隠された子孫である私は、一族の証である「ミケランジェロのロザリオ」をかざす事で中に入れる。私はかざした。「おお!あなたは」「なんということだ」モーゼの十戒のように人の波が割れた。
ということはもちろん無く、「ウヘヘヘ…リザベーション…ヒヒヒ」とか言いながらくちゃくちゃになった予約番号を書いた紙を差し出し、イタリア人に媚を売るような笑顔を振りまきながらチケットを受け取った。自分なんて小さな汚らしい存在…。
予約済みだと本当にサッサと入れた。これは絶対予約したほうがいい。オーディオガイドを借りたけど、ヘッドフォンで聴くタイプじゃなくて、電話みたいに耳に当てて聴くタイプだった。うーん。ちなみにやはり日本語解説あり!ありがたやありがたや。。。
ガイドブックによるとここには見るべきものがもうとにかく沢山あって広くて、逆に何を見ていいのかよくわからないくらいだから素人は帰れとのこと。まあそんな事は書いてなかったけど、そういうニュアンスで書いてあった。「来い!芸術は爆発だ!」僕は構えた。
なぜだか知らないが、日本人のガイド付きツアーの方が沢山いた。「この絵はルネサンス時代を代表する…」なんて感じでガイドさんが説明しているのでありがたく拝聴する。
もちろん「私は台湾人か香港人で日本人ではありません!あなた達の横にいるのはたまたまで、私は日本語がわかりません!」という演技をしながら聴いていた。何も言われなかったので「アラこの人はきっと韓国人ね」なんてツアーの人達には思われていたかもしれない。(よく言われる)
ガイド付きツアーの集団を歩いて抜かすとまた別の日本人ツアーに当たる。みんな真面目に聞いてる
あ、ちなみに中はもちろん?撮影禁止です。
ボッティチェッリの「受胎告知」
やはりこういう有名な絵の周りには人だかりができていた。でも東京で開催される期間限定系の美術展の土日の状態よりマシな気もする。オフシーズンってのもあるんだろうけど。案外ゆっくり鑑賞できる。
私達メディチ家のロザリオを作った(妄想。。。)ミケランジェロの珍しい?絵画。やはり彫刻的な表現ですよね。後ろのムキムキな男達もミケランジェロっぽい。
ボッティチェッリ「春(プリマヴェーラ)」
僕レベルの知識でも知っている名画!ガイドツアー軍団が去るのを待っていい位置で見た!いやーほんと素晴らしい。それぞれにストーリーと意味があり、プリマヴェーラなんだということをオーディオガイドを聴きながら鑑賞しました。背景が黒いのが結構斬新だと思う。
実は明日、オーケストラのコンサートに行くんだけど、そのプログラムの中にドビュッシーの交響組曲「春」があり、この作品がモチーフの1つになっているらしい。今日、本物の絵画を鑑賞して、明日この作品をモチーフにした音楽が聴けるなんて…夢みたい!
ポッティチェリ「ヴィーナスの誕生」
これまた名画中の名画!!なんだかミーハーこの上なくて美術にお詳しい方からみたら「こいつわかってーな」って感じでしょうけど、いいんです!しかし、生で見るともう少し色彩が落ち着いた感じで、より神秘的なイメージを受けました。神がかり的に素晴らしい作品。光が感じられます。
他にもカラヴァッジョや、ヴェネツィア派の画家の作品など、やはり見応えがあった。
美術館の構成も古いものから時代順に進んでいく、という感じでわかり易かった。
なぜか版画などがある2階が全然作品がなくて、何もない空間が多くてその辺は残念だった。
もしまたフィレンツェに来る機会があったらもう少し勉強をして、また来たい、と思った。
広大な美術館なので、それほどゆっくり見たわけではないのに、外に出る頃には街は暗くなって、閉館の時間も近づいていた。
美しい血まみれフィレンツェ
金曜日の夜、フィレンツェの街はキラキラと輝いていた。
それは単に街中にある照明や、BARやリストランテやショップの明かりかもしれないが、なんだか宝石の中にいるような感覚を覚えた。
この街は美しい!ローマよりも美しいと思った。人々もどこに流されるのかわからないけれども、宝石の川に身を任せて気持よく揺らされているようだった。
なんだかわからないけど、この街にもし自分が住むとしたら、悲惨な血まみれの最期が自分に待ち受けているような気がした。そしてそれは自分が望んでいたような最期のような気もする。
全くよくわからないのだが、そのような幻想に取り憑かれた。
美しい街。悲劇的な結末が待ち受けているような街。
ローマに帰ろう。朝、間違えて行けなかった中央駅に行こうと思った。僕はなんとなく「こっちが中央駅かな」と適当に歩きはじめた。
こんなに適当に歩いているんだから着かないだろう、そしてそれは自分が望んでいることだと思った。本当はまだ帰りたくない。寒いけどただただ歩いていたい。永遠にさまよっていたい。しかし人生なんて上手くいかない。気づくと中央駅についていた。適当にあてずっぽで歩いていたのに。あっさりと着いてしまった。これが望んだ結果なのか、望まない結果なのはよくわからない。
急に寒くなってきた。天ぷらそばの事が頭に浮かんだ。
なんだこんな街。もう来ないと思った。天ぷらそばが本当に食べたかった。この街には天ぷらそばがない。そんな街に僕は住むことはできないのだ。現実、現実。さようならフィレンツェ。
帰り、ローマのアパートのかなり近くに日本食レストランを発見した。
「menrui」というカテゴリ(イタリア人にmenruiで通じるのか?)に「tempura soba」を発見!お値段なんと16ユーロ!1900円くらい????ヒエー
けっ!イタリアで天ぷらそばなんてくわねーよ!!!諦めた。
まだギリギリやっていた近所の持ち帰りのできるピザ屋で魚のフライをトマトソースとオリーブで和えたものと、ライスコロッケを持ち帰りした!ライスコロッケうまあああああ 魚もうめええええ
明日に続く。