さわやかトラウマ一人旅日記

音楽が好きな30代男がぼっちを極めるため、世界や国内をヤケクソ気味に一人旅をしたその記録です!

おじさんぼっちでローマの休日12 ヴェネツィア鬱

ぼっちの利点

今日はナポリに行くつもりだった。しかし本当は気が向かなかった。日曜日だしピザ屋もやってない。なんか行く気がしない。でも行くしかない。相談する人もいない。自分で自分になんとなく流されるしかない。でも行ったら気が変わるかもと思った。

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テルミニ駅に着いた。券売機が沢山あるエリアに行こうと思ったら「カモが来た」という目つきをした男がニヤついて近づいてきた。慌てて逃げる。もうやだこんな国。この前フィレンツェから帰る時、電車から降りた途端、叫びながら性器(小さい)を握って降りる客達に見せている変な男がいた。ローマ狂った街!

自動販売機でチケットを選択する。ユーロスターでナポリまで約1時間ちょっと。ちょうど今、電車が行くところだった。その次の電車は1時間後で、2時間かかる準急的な電車だった。

つまり、1時間で着くつもりが、3時間かかるということだ。ああ時刻表を見て家を出ればよかった。ツメが甘いなあ〜と思った。

ふと思いたち、行き先を選択する画面に戻って「V」を押した。

Venezia Santa Lucia…ナポリとは逆方向。そうヴェネツイア。ヴェネツィアの中央駅。

10分後に、ヴェネツィア行きの列車がこの駅を発つ。あ、行こう。片道3時間50分。ほとんど4時間かかる。帰りは何時になるのかわからない。でも、行きたい。行ってしまおう。

切符を買った。自分で自分の行動が信じられない。

 

もともとイタリアに行くと決めた時「何としてもヴェネツィアに行きたい」と思っていた。

自分の中ではイタリアといえばローマよりヴェネツィアだった。しかし買った飛行機のチケットはローマ発着だった。それで計5泊。ローマ3泊、ヴェネツィア2泊 フィレンツェにも行きたい。散々迷って、移動ばかりの旅ばかりしているような自分が嫌になりローマ5泊にしてヴェネツィアは諦めたのだ。

 

水の都、ヴェネツィア…。ほとんどの人が「ああ素敵だね」「行ってみたいねえ」と思わせるあの光景。今回は行かないと決断したものの、ずっとひっかかっていた。ローマもフィレンツェも素晴らしかった。でも、行ってみたい。

2011年に東京都美術館で開催された「世界遺産 ヴェネツィア展」に行って、貴族の身分でありながらアジアとの交易を行いその利益を華美な生活道具や建物に費やしたヴェネツィア貴族の華麗さと貪欲さに惹かれた。

またエステ荘の時に書いたように「水」が関わるものには惹かれてしまうので、それも相まって水の都という響きだけで憧れてしまう。

 

そんなに行く気の無いナポリに計3時間かかるなら、行く気満点のヴェネツィア3時間50分を選択したとして何が悪いと思った。というか何も悪くない。往復200ユーロ近い運賃が痛いだけ。自分は1人だし自由だ。一人旅は最高だ!と思った。

 

自動販売機で席を選択したつもりが、また変な席になっていた。1人対1人の向かい合わせの席。知り合い同士だったら問題ない席だが、他にもまあまあ席は開いているのに、なぜかおじいさんと向かい合わせになった。「ここに座るのか!?」という非難めいた目をおじいさんは僕に向けてきた。何度見ても席はここだった。

 

 

ぼっちの欠点

別にマナー違反を犯したわけでもないので、堂々とすることにした。

あと4時間近く何をするか考えた。途中駅はフィレンツェペルージャボローニャ、その他読めないいくつかの駅に止まって、ヴェネツィアが最終駅。向こうに着くと辛うじて正午の時間だ。

ユーロスターが新幹線と比較してどのくらいの速いのか遅いのかは知らないが、3時間50分って大阪より遠い。今調べたら東京〜広島くらい。東京広島日帰りとかありえないw 馬鹿じゃねえかと我ながら思った。

ヒマなので音楽を聴いていた。大好きだけど普段あまり聴かない小沢健二なんかを聴いてみた。「LIFE」から「刹那」まで聴いていたら、だんだん哀しくなってきて暗い気持ちになってきた。(だから普段聴かない)

なんでまたこんな遠くまでたった1人で来たのか。どうしてこんなことになったのか。

自分で大金を叩いて来たのに、ふと突然我に帰ってしまう。

 

 

見知らぬ国を1人で歩いて何かあったらどうするんだ。

死んだらどうするんだ。言葉も出来ない。金持ちでも無いのにお金を無駄に使って一体自分は何をやってるんだ。

もしかして自分の頭は本当はおかしいのではないだろうか。

こんなに時代は進んだのに、客観的に自分を見る方法が発明されていない。本当にもどかしい。

 

いや、おかしくないし、他人とくらべて何も変わってないし、狂ってもいない、普通だと言い聞かせた。1人でもこんなところまで来れた。それなりに判断力だってあるということだ。お金だって払えた。何もおかしくないし、むしろ人生において順調だと言い聞かせた。

 
小沢健二 ある光

一人で生きるということは、自分の事を自分で理解するしかない。

何故ならば、他の誰にも自分というのものを判断してもらえないからだ。大丈夫だ自分は普通だ。それは何の根拠もない。

もう一度、本当に大丈夫だし何も問題もないといい聞かせた。僕は普通だし問題ないし普通だし問題無い普通津普通普通。。。。

この混乱は一生続くと思った。一人でいる限り。

 

 

気を取り直して…

こんな感じで鬱ごっこをしていたら、あっという間にヴェネツィアに到着した。

前のおじいさんはいつの間にか降りていた。ヴェネツィアは島で、大きな橋を電車で通って、島まで渡る。橋を渡って「あ、もうすぐ着くんだ」と気づく。

 

電車を降りると、すぐに券売機に行った。今日の帰りの切符を買う。

ヴェネツィア発 19時45分が最終だった。今は正午。意外と時間はあると思った。

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完全に名前負けしているショボい「ヴェネツィア・サンタ・ルチア駅」を出ると、まず最初にラッキーと思った。天気は良くないけど、あんまり寒くない。

ローマと比べてヴェネツィアはかなり北にあるため、かなりの寒さを予想していた。しかも、家を出るまで本気で南の温かいナポリに行こうとしていたので、結構な軽装である。ヤバイ。でもフィレンツェより寒くないのでなんとかなる!ラッキーと思った。

正面に見えるのがヴェネツィア本島。河をボートが横切る。本当に来たんだ…

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一度はヴェネツィアに行こうと計画していたので、どの辺りに何があるかはなんとなくわかっていた。とりあえず歩いて「サンマルコ広場」を目指そうと思った。

ヴェネツィアはよく言われている通り、道が狭く迷路のようで、主な交通機関は船である。ちなみにゴンドラは観光用で地元の人は水上バス(パヴォレット)を使うらしい。

初めてのヴェネツィア。思ったより静かだった。人の気配があまりしない。道を嬉しそうに歩く自分のような観光客は沢山いた。シーズンオフで、日曜日という影響もあるのだろう。それでも憧れの絵のような光景が嬉しくてゆっくりゆっくり歩いた。

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本当に静かだ。観光用ゴンドラ以外は河の上は何も走っていない。

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でもこんなにひっそりとしたヴェネツィアを見られるのもきっと今だけなんだろう。2月には有名な仮面の祭りがあって、シーズンの春夏には人であふれるらしい。

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この後、左に曲がってみたら、まるで3DダンジョンのRPGのような行き止まりだった。ちょっと楽しいw

やはりこの街は魅力的だ。こんな短い時間じゃダメと思った。

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有名な「リアルト橋」近く。リストランテの客引きのダンディなロマンスグレーにしつこく誘われるままに、屋外の席に座らされて食事を取ることにした。こんな受け身で大丈夫かと思うが、リストランテとか一人で入り辛い(実際はお金持ってきてくれれば関係ないみたいだけど)ので、ちょっと嬉しかったw

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メニュー見たけど高い!ぼったくり!でも観光地の中の観光地だし、こんなもんかとも思う。これはムール貝の蒸し物。値段は忘れたけど高かったw でも高いだけあって、美味しい!スープをパンにつけていただく。一人でもあっという間に平らげた!

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パセリの位置は失敗したけど、今回の旅、一番のベストショット。キノコのクリームパスタ。これは本当に美味しかった。値段なんていくらでもいいと思った。あとこれを置いていった時、店員が「ボナペティ」と言ったのが嬉しかった!これぞイタリア!!!

実際食べていると横をこれを見て「あ、おいしそーだね」と話ながら通り過ぎる日本人がいた。表参道かここは><

4ユーロくらいの水(!)とあわせて30ユーロするかしないかくらいだった。まあいーか美味しかったしごちそうさまと去った。でもこの後ヴェネツィアの物価の高さを知ってそんなに高くなかったかも…ということを知る。

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リアルト橋。橋の上には貴金属店がある。フィレンツェでも似たようなところがありましたね。

この橋の上からの眺めが綺麗だった。

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カメラも安くて腕がそれ以上に酷くてもwそれなりの写真が撮れる街、ヴェネツィア

どこを見回しても評判通りに美しかった。ヴェネツィア貴族の積み上げてきたもの、プライドが現代でも街並みとしてここに残っているような気がした。

この橋を渡ると島のメインストリートに近づく。(続く)